有機のカラクリ

今日はちょっとマジメな話を。

 

「空やさい」では、やさいを農薬を使わずに有機栽培で育てています。

手間も(お金も)かかるし、思ったように育たないことも多い有機栽培にしているのは、ひとえに「美味しく健康的なやさい」を作りたいから。

 

ただ一方で、そういった野菜は「有機栽培じゃないと作れない」わけではないんですね。化学肥料や農薬を使った栽培方法(慣行農法)で作られた、いわゆる普通にスーパーに並ぶような野菜だって、ちゃんと作れば同じような品質になります。

 

でも有機栽培だからこ「差が出やすい」ところもあるのです。今回はそのあたりを『品質』の観点で書いてみようと思います。

例えば、有機栽培の伝説の一つに、『有機で作ったやさいは腐らない』というのがあります。

味の違いなどより視覚的にも分かりやすいから、慣行の野菜と一緒に並べ比べた写真とかで、「ほら、腐らないでしょ」みたいな演出もよくありますね。

 

これ、科学的な観点からその原因を考察した場合、「有機だから」とは言い難く、「有機の方が腐りづらいかもね」ぐらいのニュアンスかな、といったところ。

 

簡単に説明してみますね。

 

まず慣行栽培で使われる化成肥料。これは人間のカラダで考えてみると、必要な栄養素がグッと凝縮された「サプリメント」みたいなもの。

人間も生きていくために、日々必要な栄養素があるわけですが、それをサプリメントや点滴、注射でカラダに吸収させていくイメージ。100%無駄なく、効果的に必要栄養素が満たされるんで、最低限の摂取でOK。

 

一方の有機栽培というのは、同様に人間で例えるなら、「普通の食事」。

よく噛んで飲み込み、胃腸で時間をかけて吸収して。肉や魚、野菜などにそれぞれの栄養素は入っているけど少しずつだから、たくさん食べなきゃいけないし、吸収されるまで時間がかかるし、無駄も多い。

 

イメージ的には慣行と有機の違いは、こんな感じです。

でも、感覚的に分かるかと思いますが、そのサプリメントだけの食生活。

、、、それってちょっとビミョーじゃないですか? 数値的には問題ないんだろうけど、なんだろ?「健康的」じゃないというか。。。

 

さぁ、やさいの話に戻りましょう。

 

慣行栽培で使う化成肥料は、上の例で言うところの「サプリメント」。化学的に合成された肥料なので、必要栄養素の塊り。濃度が濃いので、ほんのちょっと撒いただけで、すごくよく効きます。一気にどんどんと大きくなります。

 

でも、だからなんですが、葉や茎、果実を構成する細胞1つ1つが急激に大きくなるために、「しっかりしていない」んですね。「ゆるい」っていうか。“壁”が薄い。なので甘い匂いが漏れやすく害虫が寄ってきちゃうし、薄い壁だけに害虫たちも食べやすい。

そこで殺虫剤という農薬を使うわけです。化成肥料は農薬とセットを前提にした肥料とも言えるんですね。

 

さらに、そんな急激に膨張した細胞で“壁”が弱いので、最初に書いたように傷みやすい、そして腐りやすいという結論に至るわけです。

 

 

さて、一方の有機栽培。

有機肥料は、上記の人間の例で言ったように「食事」。

無駄は多いし、消化吸収に時間がかかる。量もたくさんいる(しかも化成より高価...)。

だから、やさいたちも待っているだけではダメ。自分たちで出来るだけ遠くまで根を伸ばさなきゃいけないし、養分の濃度が薄いからたくさん時間をかけて一生懸命に吸収消化しなくはいけない。なので成長も遅いです。

 

しかしこの遅い成長のおかげで、1つ1つの細胞がしっかりと作られていくんですね。さらに、細胞密度も高く、やさい自体の生命力も強いし、何より健康的。結果的に、害虫や病気にも強く、しっかりした構造のおかげで、「腐りづらいやさい」になるんですね。

 

右上の写真をご覧下さい。

空気の抜けた風船のようになっていますがこの前、ハウス内の片付けをしていたときの写真です。11月の寒波で全滅してしまったミニトマト、その時にすでに熟していた実がずっと放置されていたものです。水分が完全に抜けて、そのままドライトマト状態。腐りませんでした。

 

「いつまでも瑞々しい」「スーパーの野菜より傷みづらい気がする」

「やさいセット」定期便をご利用いただいているお客さまから、よく寄せられるご感想の1つです。

 

どちらも、有機栽培だからこそ「差が出やすい」品質だと思います。

そして、この品質の違いは、そのまま美味しさの違いのワケにも結びついていくのですが、、、だいぶ長くなってしまったので、そのワケはまた次回の機会にいたしましょう。。。

 

「簡単に」のハズがすっかり長くなってしまいましたね(^^;

 

 

 

追伸)

あ、冒頭、慣行農法でもちゃんと作れば、、、と「ちゃんと」に下線があったことに気づかれた方もいるかもしれません。

そう、化成肥料を使っても、肥料をこまめに散布し、一度に大きくせずにじっくりと育てるような栽培をすれば、有機栽培と同じ育ち方=同じ品質のものはできるかもしれません。

 

しかし、、、それってすごく大変。効き過ぎるクスリを薄めて、何回にも分けて使うなんて。そこまでして化成肥料を使うってのは本末転倒。

 

というわけで、「ちゃんと」は現実問題かなりムリ、というわけなのです(>_<)