連休中、大変お世話になっていた農家さんの奥さんが亡くなられ、お通夜とお葬式に行ってきました。

3年前、脱サラして農業をやろう!と突然変異で信州に来て、県の農業大学校へ。その実習先として初めて御縁をいただいた農家さんでした。
その50年以上の豊富な経験はもちろんのこと、単に経験や勘だけではなく合理的に裏打ちされた理論や技術も完全に備えられたすごい農家さん。機械を組み立て自作しちゃったり、家の離れを自分で建てちゃったり、『百姓は百の匠である』という言葉を体現されている農家さん。
実習していた時は作業の休憩時間に、いろいろと教えて頂きました。特に、農家の心得、心構え、想いなど精神的な側面での薫陶を大きく受けました。作物のことを話されるときも「アイツらはね」と、やさいたちに“人格”を認め語り、“彼らの意”をいかに酌んでやるかー、を教えて頂きました。
そんな地域を代表するようなすごい農家さんだったので、休憩時間には実に多くの方が訪ねてきていました。種苗会社の人だったり、近所の農家さんだったり、逆に遠くからわざわざ訪ねて来た人であったり。ある時なんか、届けに来た宅急便のお兄ちゃんまで「ちょっとお茶寄ってこ」と誘われていたぐらい、分け隔てなく誰とはなしにみんなが集まる農家さん。まさに「篤農家」ってコトバそのものでした。
そして、それを支えていたのが奥さんだったんですよね。
休憩のお茶の席には毎回、手作りの御惣菜というか付け合せ、甘味が添えらえていました。いろいろな種類の漬物やキムチ、おかき、ウメやカリンの砂糖漬けなどなど。市販のものは一切なくて、またそれらがとても美味しくて。
今回のことは本当に突然でした。年末にご挨拶に伺った際には全然普段と変わらず、むしろ独立1年目のこちらを心配してくださり、そして励ましていただいていたのに。
まだまだ教えていただきたいことたくさんありました。あの美味しい漬物やキムチの作り方、いろいろな古くからの農家の知恵など。
それらの多くを受け継ぐには、自分たちがまだまだ未熟なうちにお亡くなりになってしまいました。
「大丈夫。オレが教えてやるから心配するな」
仲の良かった奥様を亡くされたお通夜の席でも、気丈に言葉をかけていただきました。
まだまだ至らぬところばかりですが、少しずつでもその1つ1つを学び、受け継ぎ、伝承させていただければと思います。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。